- 書生のペナント・ジャパン -

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書生のペナント・ジャパン(No.3) from:円山の書生(賞味期限9月末日) at:99/09/24 02:11:18

私のデジカメでは天井全部をいっぺんに捉えることができなかったので
その迫力をお伝えできるかどうか分かりませんが、天井のさんによって
区切られたコーナーが12個あり、だいたいそれぞれに関西系、関東系、
山陰系…というふうに地域ごとに分類されています。そのコレクション
は言わば、部屋の持ち主であったところの息子さんによるキュレーショ
ンと言えるでしょう。それぞれに思い出もあるだろうし、本当なら一枚
一枚息子さんに解説してもらいながら剥がしたいところなのですが、そ
ういうわけにもいかず、全員で協力して儀式を遂行しました。ペナント
がなくなった天井はやはり何か寂し気でした。

ペナント以外にも古本や小物などレアなものがいっぱいあり、我々はそ
れぞれ思い思いに気になるものを物色。その中で最大のヒットは”音”
ものでした。井上さんが見つけたオープンリールのテープ。箱には、当
時息子さんが聞きながら録音したと思われるラジオ番組や音楽のタイト
ルが書かれていました。「大橋巨泉のコーナー」「モンキーズ」など。
シングルのレコードもありました。懐かしのグループサウンズのレコー
ドなんかがある束のなかで見つけた逸品は『MAN ON THE MOON』!
人類がはじめて月へ降り立った時の宇宙飛行士の声や大統領の声が収録
されたレコードです。すごすぎ。

オープンリールのテープをなんとか聞けないものかと思ったら、お爺さ
んが「たしか機械があったような…」と奥の蔵から出してきてくださっ
て、我々はどきどきしながら機械にテープをセットしました。
聞こえた!それは当時のラジオの外国語講座のものでしたが、予想以上
の美しい音質に感動。やはり音というのはモノ以上にダイレクトでノル
スタジック。

それを見ていたお婆さんが、仏壇の奥からもうひとつのテープを持って
来ました。なんとそれは、30年くらい前でしょうか、交通事故でお亡
くなりになったという娘さんの生前の声が収録されているというテープ
だというではありませんか。聞くのがつらいので、何年も仏壇の奥に閉
ったまんまにしておられたそうです。でも、今日を逃すといけないから
ということで、ぜひかけてみて欲しいとお婆さん。

流れてきた声は、こちらの御家族と出雲に住んでいたという親戚の家族
が、今でいうビデオレターのような形で、お互いにメッセージをふきこ
んだものでした。「おばあちゃん、おあじいちゃん、○○おじさん、お
元気ですか。私は元気です。昨年はよいものを送って下さってありがと
うございました…」御家族の皆さんが順番にそれぞれの声で温かいメッ
セージを送っていました。今でこそ携帯電話だインターネットだと、便
利なメディアが登場しましたが、当時のこういったオープンリールを使
ってなされたプリミティブだけど温かいコミュニケーション、とても素
敵だと思いました。

抹茶に羊羹に紅茶にケーキにお寿司にお吸い物にビールに緑茶に梨に…。
おもてなし攻撃にもめろめろ。古本などのお土産もいっぱいもらって、
「我々はいったい何をしに来たのだろう」と絶えず繰り返しながらも、
お婆さんもお爺さんもとても楽しそうにしておられたし、我々もあらゆ
る意味で満腹。ペナントが繋いでくれた幸せな一日でした。

ながながとひとりよがりなレポート、失礼しました。
今日がお彼岸だったというのも何か意味深い気がいたします。